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テクニカル集団!
今回もプログレのアルバム紹介となってしまうんだが、さすがに前回のベガーズ・オペラのようなマニアックなものではない。
それどころか、プログレだけでなくロックの王道とも言うべき名盤であります。
と言う事でイエスが72年に発表した5枚目のアルバム「CLOSE TO THE EDGE」
今回は取り上げます。

YES / CLOSE TO THE EDGE
●イエス / 危機


テクニカル集団!_b0054129_2112343.jpg
Tracks
1.Close To The Edge
 ⅰ)The Solid Time Of Change
 ⅱ)Total Mass Retain
 ⅲ)I Get Up I Get Down
 ⅳ)Seasons Of Man
2.And You And I
 ⅰ)Cord Of Life
 ⅱ)Eclipse
 ⅲ)The Preacher The Teacher
 ⅳ)The Apocalypse
3.Siberian Khatru

とにかくメンバー変遷の激しいイエスではあるが、この時期のジョン・アンダーソン(vo)、ビル・ブラッフォード(ds)、スティーヴ・ハウ(g,vo)、クリス・スクワイア(b,vo)、そして
リック・ウェイクマン(key)というラインナップが間違いなく彼らの黄金期に当たる。
前作「FRAGILE」(邦題「こわれもの」)の時に集結したこのメンバーは、それぞれが凄まじい演奏テクニックを持ち、まったくスキのない楽曲、構成で一気にプログレのトップにまで上り詰めたのだ。

そんなテクニカル集団、イエスの誕生は68年にまでさかのぼる。
元THE SYNでメイベル・グリーンズ・トイ・ショップというバンドを結成したばかりだった
クリス・スクワイアは、マーキー・クラブの経営者ジャック・バリーを通じ、ロンドンでジョン・アンダーソンと出会う。
そこで二人はすぐに意気投合し、クリスのバンドにジョンが参加したわけだ。
当時のメイベル・グリーンズ・トイ・ショップは、クリスにジョン、それにピーター・バンクス、そしてクライブ・ベイリー、ジョン・シンバルの5人だったが、まもなくクライブとジョン・シンバルを解雇、新たにメロディ・メイカー誌のメンバー募集でビル・ブラッフォード、さらにマーキー・クラブによく出入りしていたトニー・ケイを加え、68年7月にイエスは誕生するのだ。

69年にデビュー・アルバム「YES」を発表して世に出るイエスだが、当初はプログレ色は薄く、フォークやR&Bをベースにしたクロスビー、スティルス&ナッシュの出来損ないのようなバンドだった。
続くセカンド・アルバムはオーケストラを取り入れ新たな切り口で攻め、少なからず話題になったものの、全体的にはしっくりこず失敗に終わる。
このように自分達のサウンドを上手く表現しきれなかったイエスだが、3枚目のアルバムの頃からガラッと変わる。
このアルバムは基本的に前作の発展型なのだが、ピーター・バンクスに代わって加入したスティーヴ・ハウによって、全体の躍動感が格段に増し、本格的なプログレッシブ・バンドへと変貌していく。
さらにキーボードのトニー・ケイが脱退し、新たにリック・ウェイクマンが加入する事により、いよいよ黄金期のイエス・サウンドが展開されていくのだ。
そこで発表したのが4枚目のアルバム「FRAGILE」で、高度な演奏技術と練られた構成で、大曲3曲と小品がメリハリよく繋がった名作となった。
ここから、いよいよイエス・サウンドの本領が発揮されていくのだ。

そういった状況で次に発表されたのが、「FRAGILE」に負けず劣らずの名盤であり、
今回の本題である「CLOSE TO THE EDGE」である。
前作で見せた大曲指向がより強く表れた今作は、収録曲数がレコードで言うところのA面1曲、B面2曲のたった3曲しかない。
オープニングの「Close To The Edge」にいたっては18分50秒という長さである。
だが、このアルバムの凄いところは、各曲がそれほど長いにも関わらず、凄まじい集中力と緻密なまでに計算され尽くした構成によって、全く聴く側を飽きさせないところだ。
それどころかアッという間に終わると言った感じだろうか。
もともとバラバラなパーツを究極とも言える力技でまとめ上げ、壮大で緊張感のある曲へと昇華した「Close To The Edge」、アコースティックな「And You And I」、ノリの良いナンバーの「Siberian Khatru」と、非常に密度の濃い楽曲が揃っている。
もちろんそれを可能にしてるのは各メンバーの卓越した演奏技術があってこそなのだが、それにしても凄いサウンドなのだ。
特に「Close To The Edge」の小鳥のさえずりから突如、雷でも落ちたかのような
怒涛のような音の嵐からなるイントロは、いつ聴いても鳥肌もんである。
と同時に、これからとんでもないものが始まる予感をさせるのだ。
そして、その予感通りとんでもないサウンドがアルバムを通して聴く事ができる。
まさに傑作中の傑作と言えるアルバムなのだ。

プログレというと”曲が長くて難解”というイメージが強いために敬遠されがちである。
確かにこのアルバムも曲こそ長いが、”難解さ”という点では他のプログレ・バンドよりも薄く、サウンドそのものも聴きやすい。
それでいて聴く者を圧倒するほどの音の厚みを持ったこのアルバムは、プログレ初心者にお薦めでもある。
そしてロック・ファンなら必ずこのアルバムをCDラックに入れておいて欲しいかな。
by sy_rock1009 | 2005-07-12 21:08 | 洋楽アルバム・70's
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